倶楽部報
倶楽部報(2026年春季リーグ戦優勝特別号)
「最高のワンチーム」 41回目の優勝に相応しく
蔭山 実(昭和61年卒 四條畷高)
2026年06月05日
高々と上がった飛球が右翼手のグラブに収まる。通算41回目の優勝が決まった瞬間、打球の行方を見つめるナインやベンチの選手たちが飛び跳ねるようにしてマウンドに駆け寄り、喜びを爆発させた。東京六大学野球が始まって101年目の春季リーグ戦。初めて導入された指名打者制で攻撃力は増し、エースを中心に投手陣が最後まで踏ん張る。投打の噛み合った、力強いチーム野球で、完全優勝を成し遂げた。
慶大は開幕の対立大戦から2試合とも二桁安打、二桁得点で連勝し、勢いに乗った。だが、優勝に向けて大きな弾みになったのは、前回優勝した2023年秋季リーグ戦以来となる、明大からの勝ち点であったことは言うまでもない。そして、優勝に向けて終盤へ、負けられない対法大戦で1敗の後から連勝して勝ち点を挙げたことは大きかった。
そのチームの躍進を支えたのがエース、渡辺和大(4年、高松商高)。9試合で8試合に先発し、7勝2敗、防御率1.28で、最優秀防御率のタイトルを手にした。奪三振65はリーグ2位の投手の2倍半近く、圧倒的な投球だったことを示している。特に、対明大戦で、8安打を許しながらも奪三振9で1点差を守り、完投勝利を挙げた一回戦、8回を奪三振13で失点2に抑え、勝ち点奪取につなげた三回戦の力投はいずれも見事だった。さらに、対法大戦では、一回戦は好投ながら惜しくも敗れたが、三回戦で六回に2点を許すまで無失点に抑え、打線の奮起で大勝を導いた。優勝のかかった慶早戦は3連投。一回戦は初回の先頭打者本塁打だけで7回を失点1に抑え、二回戦は最終回の登板で逆転を許したものの、三回戦は8回を無失点、奪三振11と渾身の投球で優勝を手繰り寄せた。
この渡辺和を支えたのが、中継ぎ、抑えとして試合ごとに安定感を増していった鈴木佳門(2年、慶應高)。渡辺和をしのぐ10試合に中継ぎで登板し、負けられない対法大二回戦で貴重な1勝を挙げた。打者58人に対して被安打8、奪三振18。失点は慶早二回戦で許したソロ本塁打の1点だけで、防御率0.59という成績だった。さらに、広池浩成(4年、慶應高)、水野敬太(3年、札幌南高)、熊ノ郷翔斗(2年、桐蔭学園高)、沖村要(4年、慶應高)らの投手陣が要所を締めて勝利を確実にした。
攻撃陣でチームを牽引したのが、主将の今津慶介(4年、旭川東高)。本塁打2、二塁打5、リーグ7位の打率3割2分7厘で、チームに奮起を促す巧打が光った。守っても慶早戦二回戦で、三塁ゴロから送球を受けて二塁を踏み、三塁に送球して併殺を成立させる好守を見せると、走塁でも常に積極的に本塁を狙って得点につなげた。今津に好機をつないだのが、全10試合に指名打者としてフル出場した小原大和(4年、花巻東高)。開幕の対立大一回戦から、自身リーグ戦初となる本塁打を含む5安打4打点と活躍し、打率で今津を7毛上回るリーグ6位に入った。優勝を決めた慶早三回戦で終盤に貴重な追加点となった今季2号のソロ本塁打は大きかった。
さらに、打線を引っ張ったのが林純司(3年、報徳学園高)。対法大二回戦で大量得点につながった適時打のように、逆らわずに右方向へ力強く弾き返す巧打が随所で光り、チーム最高打率の3割4分はリーグ4位。下位打線の吉開鉄朗(4年、慶應高)も勝負強い打撃で、リーグ9位の打率3割2分6厘を記録。対明大三回戦でリーグ戦初本塁打となる勝ち越し2点本塁打を放ち、勝ち点奪取に貢献した。リーグ10位の打率で続く中塚遥翔(3年、智辯和歌山高)は「チームの四番」として中軸を担い、対立大二回戦の逆転本塁打、対明大一回戦の勝ち越し打、対法大二回戦の逆転打とチームを勝利へと導いた。中軸でも起用された一宮智樹(2年、八千代松陰高)も打率3割2厘と活躍し、要所で適時打を放ち、チームを支えた。
快進撃を続けた今季を振り返り、「最高のワンチームになっている」と今津主将。相手打線を抑えること、得点を重ねることは容易ではないが、全部員がそれぞれの役割を果たし、慶大らしい「粘り強い野球」を取り戻してきたことが、優勝の最大の要因をいえるだろう。秋季まで見通して、チームは初の「四冠」達成を目標に掲げる。8日から始まる第75回全日本大学野球選手権大会でも躍進を期待したい。

今津慶介

渡辺和大

小原大和

中塚遥翔

林 純司








