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倶楽部報(2021年秋号)

いんたーNET

谷田 成吾(平成28年卒 慶應高 徳島インディゴソックス球団代表 株式会社sandpick代表)

2021年09月10日

私は現在、徳島にあるプロ野球独立リーグチーム「徳島インディゴソックス」という球団と、AIシステムの開発やWEBサービスを提供する株式会社sandpickという2社を経営しております。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、依然厳しい状況が続くスポーツチームと、まだ生まれたての子どものような新会社の経営ですので、大変なことも多いのですが、ずっと目指していた「より多くの人に影響を与え、生活を豊かにするプロ野球選手」という目標を経営者に置き換え、叶えるべく日々取り組んでいます。

私は塾高、塾野球部、JX-ENEOS、アメリカ挑戦、徳島インディゴソックスと、素晴らしいチームや環境で「プロ野球選手になる」という唯一にして最大の目標を、もうこれ以上ないくらいに、最後の最後まで夢を追いかけさせてもらいました。その中でも塾野球部で過ごした4年間は自分にとって、野球選手としてだけでなく、人間として大きな変化が生まれた期間でした。

なかでも一番自分にとって影響が大きかったことといえば、やはり『ドラフト指名に漏れた事』です。調査書が11球団から届いていましたので、どこかの球団からは指名がくるのではないか思っていましたが、私の考えは甘く、結果的に指名はありませんでした。指名漏れをしたこと自体もショックでしたが、『由伸2世』と紙面等にもでており注目されてしまっていたからこそ、様々な方面から来た言葉たちにとてもショックを受けたのを覚えています。

そんな時に背中を押してくれたのが、同期や後輩やOBの諸先輩方をはじめとする塾野球部を応援してくださる多くの方々でした。嫌な気持ちは極力したくないものですが、今思えば自分を成長させてくれた体験でもあったように感じています。外的要因をうまく咀嚼できるようになりましたし、メタな認知力も上がった気がします。なによりこの経験をしたからこそ、自分の言葉が常に誰かを傷つけていないか意識して生きられるようになりました。自分なりにいい方向に変換できたのは、辛い時に声をかけてくださった方々のおかげです。多くの方に支えられ、声援をいただき、様々な経験をさせてもらいながら大学4年間を走り抜けらられた事、今でも心から感謝しています。

「イノベーションに必要な新しい知は、既存知と別の既存知の新しい組み合わせによって生まれる」

経済学者シュンペンターのこのような言葉があるようですが、思考をやめず新しい取り組みを絶えず行う姿勢が、今の塾野球部の強さを作っているのではないかと感じています。2016年には林助監督が就任しデータを活用して投手王国を作りあげたり、2017年には小林由佳君が東京六大学野球の初の女性主務に就任し優勝を果たしたり、2018年には特定非営利活動法人Being ALIVE Japanと長期療養中のお子さんをチームの一員として受け入れる活動を始めました。あくまで一部分であり、直接的、間接的の違いもあるとは思いますが、どの新しい取り組みも塾野球部を強くした要因の一つであると感じます。 今後も様々な新しい組み合わせにチャレンジすることによって、塾野球部の選手たちは新しい気づきや、学び直しを経て、さらに強くなっていくと思います。思い込みや偏見を取り払い、認識を“アップデート”し続け成長する彼らが、野球界はもちろん、これからの社会を作り上げる一員として活躍してくれることが楽しみでなりません。

コロナ禍によって、私たちは従来の価値観が大きく変わる転換点にいます。私も今の塾野球部のように、従来の価値観に囚われず、大胆に道を見つけ、そこから新たな世界を切り開いていきたいです。

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