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倶楽部報(2022年春号)

六大学初の四冠にあと一歩 苦杯からの挑戦

蔭山  実(昭和61年卒 四條畷高)

2022年04月08日

昨季、慶大はリーグ戦で30年ぶりに春秋連覇を達成し、その間の夏の全日本大学選手権では34年ぶりの大学日本一となり、秋の明治神宮大会で、大学野球では史上5校目、東京六大学野球連盟としては史上初の四冠に挑んだ。ここでも投手を中心とした守りと打線の繋がりで、厳しい戦いを制し、決勝まで勝ち上がった。最後は1点差で惜しくも敗れ、準優勝に終わったが、次を担う3年生、2年生が今季にもつながる素晴らしい活躍を見せた。

四冠をかけて迎えた初戦、二回戦の東京農業大北海道オホーツク戦は投打がかみあい、7−0(7回コールド)で勝利した。正木智也(4年、慶應高)、廣瀬隆太(2年、慶應高)の連続本塁打で先制すると、渡部遼人(4年、桐光学園高)の攻守にも助けられて、先発、増居翔太(3年、彦根東高)が6回を被安打1、無失点と好投。中盤以降、萩尾匡也(3年、文徳高)、下山悠介(3年、慶應高)、廣瀬の適時打などで点差を広げると、途中出場の主将、福井章吾(4年、大阪桐蔭高)のスクイズで7点目を挙げ、この時点でコールド勝ちを決めた。福井は先発をはずれたが、善波力(2年、慶應高)が増居をリードし、打っても新人戦以外では公式戦で初安打を放つなど、しっかりと代役を果たした。

続く準決勝は神奈川大とシーソーゲームとなり、同点で迎えた最終回に下山の2点本塁打でサヨナラ勝ちした。初回に四球で出塁した渡部が続く内野安打の間に三塁を陥れるという、脅威の走塁で、内野ゴロの間に生還して1点を先制。先発の生井惇己(3年、慶應高)が3点を奪われ、逆転を許したが、流れは相手に渡さない。萩尾の中越え本塁打で追い上げると、橋本典之(4年、出雲高)、福井の連打などで同点に追いつき、さらに生井が安打で繋いで渡部遼の犠飛を呼び、逆転に成功した。その直後に暴投で再び同点とされたが、6回以降、渡部淳一(3年、慶應高)ら中継ぎ陣が無失点の好投で流れを戻し、最終回は初戦に先発した増居が相手打線を三者凡退に仕留めてサヨナラ勝ちにつなげた。

四冠まであと1勝となった決勝は中央学院大との激戦となった。初回に萩尾が無死一塁でバントからバスターに切り替えて右翼席に運ぶ、驚異の2点本塁打でこの日も先制。2回には、朝日晴人(3年、彦根東高)の安打を足がかりに再び萩尾の適時打で2点を追加し、4-0とリードした。だが、6回に5点を失うなど、後半は5−9と劣勢に立たされたが、逆境に強い廣瀬が7回に先頭打者で中越えにソロ本塁打を放つと、さらに犠飛で1点を挙げ、8回には萩尾と橋本典の長短打で1点差に詰め寄った。投げては、7回からマウンドに上がった森下祐樹(2年、米子東)が新人戦以外では公式戦で初登板ながら2イニングを被安打1、無失点の好投で攻撃へ流れをつくる。最終回、先頭の朝日が安打で出塁すると、代打の宮尾将(3年、慶應高)が犠打から一転、バスターで左前に運び、無死一、二塁と好機をつかむ。ここから二死三塁となり、打席の下山に期待は募ったが、右飛に倒れた。

あと一歩で四冠を逃したが、3年生、2年生の活躍はチームの大きな財産となった。1番打者と2番打者を務めた萩尾は3試合で13打数6安打(打率4割6分2厘)、本塁打2,打点6と打線を引っ張った。中軸の廣瀬も12打数6安打(打率5割)、本塁打2本と奮い、下位では朝日が11打数6安打(打率5割4分5厘)と大活躍だった。投げては、増居は3試合連投で、計11イニングと3分の1を投げ、奪三振8と力投。準決勝を締めくくった翌日の決勝は途中降板となったが、投手陣の軸として大役を果たした。

大学野球での四冠は50年を超える歴史で、関大、近大、亜大、東洋大の4校しか達成していない。1972年に関大が初めて四冠を達成した当時は、慶大が3連覇の時代で、関大と頂点を争った。東京六大学野球連盟では、21世紀に入って早大が2度逃している。リーグ戦優勝回数で最多の法大は1970年代の黄金期でも達成できなかった。対戦相手と切磋琢磨しながら、1年間を通してチームをベストの状態で維持することがいかに難しく、それに挑む機会を得られることの大きさがわかる。今季も「リーグ戦優勝」「日本一」「早稲田に勝つ」を目標に、下山が主将としてチームを率い、苦杯から巻き返して、春のリーグ戦で50年ぶりの3連覇に挑む。そこから一つずつ山を登っていく挑戦がまた期待される。

明治神宮大会の準決勝でサヨナラ2ランを放った下山悠介選手
明治神宮大会の準決勝でサヨナラ2ランを放った下山悠介選手

明治神宮大会の決勝で先制2ランを放った萩尾匡也選手
明治神宮大会の決勝で先制2ランを放った萩尾匡也選手

明治神宮大会の決勝で終盤に好投した森下祐樹投手
明治神宮大会の決勝で終盤に好投した森下祐樹投手

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