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倶楽部報(2021年春号)

1球の重み、改めて雪辱を期す

蔭山  実(昭和61年卒 四條畷高)

2021年04月09日

夏に行われた1試合総当たりの春季リーグ戦から1カ月後に始まった令和2年秋季リーグ戦は通常の日程通り、最終週の第8週に慶早戦が行われ、両校が優勝をかけて戦った。コロナ禍の影響が続き、日程は従来通りでも2試合総当たりとして週末に試合を行う「10試合制」が初めて採用され、優勝もこれまでになかったポイント制で争われた。勝利(1ポイント)、引き分け(0.5ポイント)、敗戦(0ポイント)。慶大は東大と立大にそれぞれ2勝、明大と法大にそれぞれ1勝1分の戦績で、8試合6勝2分の7ポイントを挙げ、2位の早大(8試合5勝3分け、ポイント6.5)を抑えて単独首位で慶早戦を迎えた。無敗同士の優勝決定戦となったが、慶大は1勝か2分けで優勝が決まり、早大よりも優位にあった。

一回戦は先発の木澤尚文(4年、慶応)が好投したが、1-1で迎えた七回に2点本塁打を許し、1-3で敗れた。翌日の二回戦も緊迫した試合展開となり、四回に1−1の同点から、主将・瀬戸西純(4年、慶応)が二塁に走者を置いて詰まりながらも左翼線に落ちる安打を放ち、2−1と勝ち越した。その後は継投で踏ん張り、1点リードのまま、八回から木澤が連投でマウンドに上がる。木澤は慶早戦前の第6週でも、対法大一回戦で先発、同二回戦で抑えに回り、エースとしてチームを牽引していた。この回を打者3人で退けると、続く九回も打者2人を打ち取り、優勝まであと一死と迫った。

しかし、ここで7番の左打者、熊田に外角高めの初球を弾かれて左翼線に安打を許し、二死一塁。8番の左打者、蛭間を打席に迎えると、左腕の生井惇己(2年、慶応)がマウンドを継いだ。前日の一回戦で木澤から勝ち越しの2点本塁打を放っていたのが蛭間だった。一方、春季リーグ戦の慶早戦で、慶大が5−3で延長戦を制したときは、2点をリードした延長十回から登板した生井が、無死一、二塁から始まるタイブレークで一死満塁となった後、蛭間を見逃しの三振に打ち取っていた。しかし、この日は、甘く入った初球の変化球を弾き返され、中堅後方のバックスクリーンに飛び込む2点本塁打で逆転を許す。蛭間は慶早戦2試合での2安打がいずれも2点本塁打だった。一転して追いかける立場になったその裏の攻撃は、代打の嶋田翔(4年、樹徳)が安打で出塁したものの、後続を打ち取られ、2-3で敗れた。あと一死のところで勝ち切れず、慶早戦連敗で優勝を逃した。この経験を糧に改めて新チームでの雪辱を期待したい。

惜しくも優勝は逃したが、秋季リーグ戦も春季と同様、リーグ戦初となる活躍が目立った。廣瀬隆太(1年、慶応)は開幕の対東大一回戦でリーグ戦初安打となる先制の2点本塁打を放つと、翌日の二回戦で2試合連続の2点本塁打で勝利を決定づけた。この試合で六回から2イニングを完全に抑えた渡部淳一(2年、慶応)が初勝利を挙げた。リーグ戦後半の対明大二回戦では、同点で打席に入った3番手投手の長谷川聡太(3年、慶応)がリーグ史上初となる初打席満塁本塁打を放ち、自らも初勝利を挙げた。代打も考えられたが、「竹内助監督から投手で一番打撃がいいと聞いていた」と堀井監督はそのまま打席に送った。一方、下位打線で勝利を決める貴重な打点を数多く挙げ、シーズン通算タイとなる10打点を記録した瀬戸西の攻守にわたる活躍は特筆すべきであった。

秋季慶早2回戦で試合後に挨拶に向かう選手たち
秋季慶早2回戦で試合後に挨拶に向かう選手たち

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