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倶楽部報(2018年秋号)
次世代育成大学野球サマーリーグin新潟 2018
松橋 崇史(平成16年卒 竜ケ崎一高)
2018年09月06日
本年も8月9日から8月12日の4日間の日程で、次世代育成大学野球サマーリーグ(以下、サマーリーグと呼ぶ)が、新潟県三条市、見附市で開催されました。第4回目となるサマーリーグには、東京六大学野球連盟から明治、立教、早稲田、慶應義塾の各野球部と、その他に、東洋大学野球部と筑波大学野球部が参加しました。現地からは新潟医療福祉大学野球部が参加しました。4日で7試合が行われ、新人世代(1,2年生)が短期間で多くの実践機会を積む中で、各選手が成長の機会や課題の発見をしてくれたのではないかと思います。試合結果や活躍した選手などは、塾野球部の報告を参照ください。三田倶楽部からは、深澤理事長はじめ、計10名の皆さんに応援に駆けつけて頂きました。松下勝実先輩には静岡からご足労頂きました。厚く御礼申し上げます。
これまで、毎年規模を拡張し続けてきましたが、大会参加校や試合数は、球場数などの関係から昨年度と同規模に推移しました。その一方で、選手から構成される企画チームへの参加メンバー数5名から12名となり、新たな企画や取り組みが多く生まれることになりました。過去の大会との試合数等の比較は、表1を参照ください。以下では、今年度のサマーリーグの企画運営面で特徴的なことに焦点を当て、写真を使いながら紹介し(一部の写真に説明を加えています)、最後に、こうしたオリジナルリーグを展開する意義について触れたいと思います。
開催年 | 参加大学数 | 新潟外からの参加学生数 | 試合数 | 地元高校との試合数 | 企画運営に関わる学生数 | 地域交流プログラム(野球教室等) |
2015 | 3 | 60 | 4 | 0 | 2 | 1 |
2016 | 5 | 120 | 8 | 1 | 2 | 1 |
2017 | 6 | 180 | 21 | 6 | 5 | 1 |
2018 | 6 | 220 | 20 | 4 | 12 | 3 |
1)企画チーム
サマーリーグでは次世代育成のミッションの下で、選手から企画チームを募り、大会の企画運営を担ってもらうことを試みてきました。2017年度の5名(立教1名、慶應義塾4名)から、2018年度は12名(明治1名、立教2名、法政2名、早稲田2名、慶應義塾5名)と人数が増え、活動開始時期も2017年度の5月末から2月末と早めてスタートしました。企画チームは、参加校のマネージャーと連携しながら活動を推進していきます。時には、マネージャーが企画チーム的な働きをすることもあります。企画チームのミッションは、サマーリーグを発展させながら円滑に運営すること、かつ、選手の参加費負担を下げるべく売り上げを高めることです。もちろん、個々人が、企画運営を通じて成長することも重要な要素となります。
企画チームは、毎年メンバーが入れ替わり、かつ、選手としてサマーリーグを経験している学生も少ないので、企画チームに手を挙げる多くの学生にとって、サマーリーグは未経験です。準備も暗中模索のような面もあり、大変ですが、大会期間中は、彼らの準備がどんどん形になっていきます。
今年は、広報班、協賛班、地域貢献班、グッズ班に分かれて、活動を展開しました。広報班はSNS(ツイッター、インスタグラム、フェイスブック)を通じた情報発信、パンフレットデータの取り纏めなどを行いました。試合内容の発信は多くの方にリーチしました。協賛班は、多くの寄付/協賛を得るために様々な活動を行いました。協賛班の活動の多くは、今年度から始まった活動で、手探りの中で進んでいきましたが、広告代理店の参加校野球部OBなどにアドバイスを受けながら、現地新潟の参加校OBを主な対象にして活動を展開し、成果を挙げました。地域貢献班は、3つの野球教室の広報と企画準備を主に担当し、大会期間中の地域貢献プログラムの運営にあたりました。その他、様々な企画準備が行われ、企画チームの学生無しではできなかったことがいくつも生まれました。そして、大会運営も担い、2球場の計20試合の試合運営を担いました。
今後も、企画チームの役割は重要になると考えられますので、今年作った流れをどう次につないでいくのか、今年のメンバーらと考えていきたいと思います。
写真:左上:大会前日の夕食の様子、右上:ホテルでの朝食の様子
左下:選手交流会時の企画チーム集合写真、右下:閉会式の企画チーム
企画チームの中には試合に選手で出場する学生もいます。選手で出場したのは4名。立教の浅尾君と廣瀬君、早稲田の井村君と竹沢君です。初日には4人が同時に試合に出る場面もありましたし、井村君は、早稲田対慶應義塾の試合でホームランを放つなど成果を出しました。彼らの活躍をバックネット裏から興奮して応援している他の企画チームメンバーの姿が、とても印象的でした。
2)旗
今年からスタジアム周辺を盛り上げるために参加校の旗を各大学からレンタルしてもらい(一部の大学は作成)、道路に並べて頂きました。スタジアムの外野スタンドにも同様の施しを行いました。大学野球のイベントであることが伝わり、出迎えてくれるような雰囲気がありました。
3)三条市下田地区の滞在
各チームは、三条市下田地区に、風呂、宿泊、朝夕の食事を対応頂きました。下田地区は、三条市の中山間地域にあります。約210名の選手・男子マネージャーが、各地区の公民館に分宿しました。8日夜には、前入りした企画チームの学生が宿泊、女子マネは古民家に宿泊しました。公民館での雑魚寝は写真の通り、きついようですが、よく寝れた、夜空がきれいというのが感想のようです。朝食、夕食は地元の仕出し屋に対応頂きました。第1試合を行うチームの各公民館の出発は朝6時ですので食事は5時30分ぐらいからですが、ご対応頂きました。お風呂は地元の銭湯などにご対応頂きました。これは、三条市の下田地区にスポーツ合宿を誘致しようという施策に応じたものでもあります。宿泊施設があれば、そこに泊まるのでしょうけれども、そうした施設が無いために、既存の地域資源をフル活用で対応頂いてます。結果、3泊4日の滞在で、お弁当、11日夜の交流会の参加費も含めて、15000円ほどの費用で済みました。
左:筑波大学の食事の様子、右:筑波大学の就寝時の様子
4)地域貢献プログラム
地域貢献プログラムには高校生との交流試合と野球教室があります。交流試合は4試合行いました。今年の野球教室は、未経験者向け、シニア向け(中学生硬式向け)、少年野球向けと3つの野球教室が行われました。陣頭指揮は企画チームの古谷君(明治大学)がとり、企画チームが全面バックアップ。5大学の選手が対応してくれました。こうした野球教室は、準備が大変です。実際に野球教室をやったことが無い学生もいるのでなおさらですが、始まったら、参加者ともども野球を楽しんでいる様子でした。反省も多くありますが、次年度に引き継いでいきたい企画です。
左上:未経験者向け野球教室の様子、右上:打撃パフォーマンスを見守る子供たち
左下:未経験者向け野球教室の集合写真、右下:シニア向け野球教室の指導の様子
5)選手カード
今年は選手と地域の交流ツールとして、選手カードを作成して頂きました。宿泊先の地域での住民の皆さんとの交流や3つの野球教室の際に利用しました。野球教室の後は、子供たちが選手のカードを集めまわっていました。
6)応援合戦
応援合戦はサマーリーグ初年度より模索されてきましたが、応援指導部の日程が合わずなかなか成立しませんでした。今年度は、企画チームの井村君(早稲田)と、岡崎君(慶應義塾)の働きで早慶の応援団が応援に来ました。初めて応援を聞く新潟の人達にとっては、まさに「カルチャーショック」だったようです。普段は早慶両サイドに分かれますが、今回は、猛暑も予想されたので屋根のあるバックネット裏に演壇を用意し、そこで早慶が代わる代わる応援することになりました。地元三条高校の吹奏楽団も参加してくれましたが、高校生にとっても新鮮な体験だったと思います。「野球が好きになりました」ということをいう高校生もいたそうです。応援合戦成立のためには、費用も必要となりますし、参加した全チームが応援をバックに試合を行うとなると課題は山積です。より本番に近いという面で、早慶戦に出場した選手にはより良い環境を創ることができましたし、企画した学生達にとっても大いに盛り上がった試合の様子は自信になったと考えています。次世代育成の趣旨をどのように実現していくのかということがポイントになります。
今年は、初めて閉会式を実施しました。優勝は明治、準優勝は早稲田(去年は優勝が筑波、準優勝が慶應義塾)。写真は今年初めて行った閉会式と集合写真の様子です。
最後に
サマーリーグ開催は、実践機会が不足する育成世代(1,2年生)により多くの試合経験を提供することを目的に起案され、多くの参加校にご理解頂いております。さらにそこに大学野球の地域貢献や大学野球文化の発信、開催地域の地域活性化への寄与などの目的が付随しています。さらに、スポーツビジネス等が授業で学べるようになる中で、そうした知識を実践する機会としても機能するようなり、企画チームのメンバー増の一因になっています。
サマーリーグ開催前の7月22日、私(松橋)は、日本スポーツ産業学会のシンポジウム「大学スポーツのオルタナティブ」というセッションで、サマーリーグの取り組みを紹介しました。学生の主体的な運営が注目されての登壇でした。サマーリーグは、多くの関係者の皆様に支えられ成立していますが、学生はその磁石の役割を果たしています。企画チームに参加している学生達はその磁力を強める役割を果たしています。一方で、学生の主体的な運営とはいうものの、当然ながら、OBや現地の大人が担当しなければいけないことは多くあります。その役割分担を念頭に置きながら、学生の役割をどのように拡げ、企画運営面の活躍の場を作っていくのかが、今後の課題になります。
本年11月23日から25日には、静岡市において大学野球オータムフレッシュリーグin静岡が開催されます。新潟での取り組みがモデルになりました。草薙、庵原はじめ3球場において8大学、6高校の参加で行われます。実行委員長は、三田倶楽部員の松下勝実先輩です。地元の静岡大学野球部、東海大学海洋学部野球部が事務局を務め、企画運営に携わる学生もいます。開催地の大学が企画運営に関わるのは新潟では無い形態です。サマーリーグで得た知見を活かしながら、学生主体運営の色を強めながら進めていきたいと考えています。
最後になりますが、三田倶楽部の皆さまには、次世代育成大学野球サマーリーグ開始当初から多大なご理解・ご支援を頂いてきました。引き続きのご指導、どうぞよろしくお願い致します。