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倶楽部報(2021年秋季リーグ戦優勝特別号)

30年ぶり春秋連覇で39回目の優勝

蔭山  実(昭和61年卒 四條畷高)

2021年11月19日

堀井哲也監督が二度、三度と宙を舞った。コロナ禍で、春季リーグ戦と全日本大学野球選手権の優勝では見ることのできなかった胴上げの時がようやく訪れた。最終戦となった早大との2回戦。引き分けで早大と勝ち点で並んだものの、勝率で上回り、39回目の優勝が決まった。春秋連覇は1991年以来、30年ぶり4回目の快挙となった。

優勝は慶大と早大の2校に絞られていた。早大と1試合でも引き分ければ、優勝という状況で、前日の1回戦で今季初黒星を喫し、後のない2回戦を迎える。

初回に3点を先行されたが、中盤に流れが傾く。4回の守りを三振と二盗刺殺の併殺でしのぐと、5回に橋本典之(4年、出雲)の内野安打を足掛かりに渡部遼人(4年、桐光学園)の内野安打で1点を返す。7回、二死から古川智也(3年、広島新庄)が中前打を放ち、若林将平(4年、履正社)が四球でつなぐと、渡部の適時打に敵失が重なり同点に追いついた。

終盤は勝敗の行方の分からない激闘へ。圧巻だったのは8回、二死一、三塁のピンチで、昨秋に優勝目前で逆転本塁打を許した蛭間を、橋本達弥(3年、長田)が得意の変化球で空振りの三振にしとめ、勝ち越しを許さない。同点で迎えた9回、先頭打者の三遊間へのヒット性の打球を朝日晴人(3年、彦根東)が飛び込んで抑える。1点も許されない状況で、橋本は二死から二塁に走者を背負ったが、最後の打者を二塁への飛球に打ち取った。

試合後のインタビューで堀井監督は「非常に苦しいシーズンだった」と振り返り、前日の敗戦で「泣いても笑っても最後の試合。いいゲームをしようと声をかけた」と語った。苦しい試合展開にも負けなかった要因に「追加点を与えなかったことが非常に大きかった」と投手陣の踏ん張りを挙げ、同点につなげた渡部の一打を「よく打ってくれた」と称えた。

秋季リーグ戦はコロナ禍で開幕直前に日程が大幅に変更される異例の事態となった。次の試合まで3週間もあくかと思えば、5日間で4試合という過密な週もあり、過去にない日程となったが、投手を中心とした守りで「負けない野球」を体現した。

投手陣は、エースの森田晃介(4年、慶應)は自己最多の8試合に登板し、1回戦の先発に続いて2回戦も中継ぎで好投。2回戦に先発した増居翔太(3年、彦根東)は防御率2.16でリーグ4位に入った。中継ぎ陣も生井惇己(3年、慶應)が法大1回戦で先発して好投し、渡部淳一(3年、慶應)は7試合で9回3分の1を無失点に抑えた。ベンチ入りした笠井建吾(4年、明和)も4試合に登板、法大1回戦で初勝利を挙げ、投手陣に層の厚みを加えた。

打撃陣は、4番の正木智也(4年、慶應)が警戒される中で渡部がチームトップの打率3割5分9厘、6盗塁でチームを牽引した。廣瀬隆太(2年、慶應)はリーグトップタイの3本塁打と長打力を発揮し、3番の下山悠介(3年、慶應)も第5週の法大戦まで10安打を放ち、勝利に貢献した。一方で控え選手の活躍も目立った。前半戦では、北村謙介(3年、東筑)が明大2回戦で9回に二死から代打でリーグ戦初安打となる同点本塁打を放ち、敗戦を阻止する。後半戦では、立大1回戦で途中出場の萩尾匡也(3年、文徳)が勝利を決める長打を放ち、その後の法大戦と早大戦では先発出場で11打数5安打3打点と活躍した。

昨秋、「あと一死」で優勝を逃した悔しさからスタートしたチーム。主将の福井章吾(4年、大阪桐蔭)が正木、上田寛太(4年、郡山)の両副将とともに全部員をリードしてきた。春季リーグ戦に優勝し、日本大学選手権で34年ぶりの日本一に輝いたが、そこにとどまることなく、再び頂点を目指した。早大に勝つという目標はなお残されたが、福井主将は「みんなで優勝という形で終わることができて、やってきたことが実ったと感じている」と語った。

激闘の慶早戦を終え、カクテル光線の照らす神宮球場では、慶大と早大の2校のみで閉会式が行われ、春季に続き福井主将にしっかりと天皇杯が手渡された。チームは11月20日から始まる明治神宮大会に出場し、「春季リーグ戦優勝」「全日本大学選手権優勝」「秋季リーグ戦優勝」に続く優勝へ、東京六大学野球連盟の代表として初の「四冠」に挑む。


春秋連覇を決め、マウンドに駆け寄って喜ぶナインの写真
春秋連覇を決め、マウンドに駆け寄って喜ぶナイン

対早大2回戦で、同点のホームを踏んで生還した若林将平外野手の写真
対早大2回戦で、同点のホームを踏んで生還した若林将平外野手

表彰式に臨む選手たち。(左から)正木智也副主将、上田寛太副主将、森田晃介投手、渡部遼人外野手、米倉孝太郎学生コーチの写真
表彰式に臨む選手たち
(左から)正木智也副主将、上田寛太副主将、森田晃介投手、渡部遼人外野手、米倉孝太郎学生コーチ

39回目の優勝を決め、記念写真を撮るV戦士たちの写真
39回目の優勝を決め、記念写真を撮るV戦士たち

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